2017. 7/11(火)

小池龍之介和尚 のマインドフルネス セミナー & 坐禅体験

OAC(日本広告制作協会)会員を対象に開催した、月読寺住職、小池龍之介和尚による「マインドフルネス」に関する講話と坐禅体験。ストレスの多い現代社会における心のあり方について、坐禅体験を交えてお話しいただいた。

[マインドフルネスとは、今、体がどうなっているかに気付くこと]

 最近はメディアでも「マインドフルネス」という言葉がしばしば取り上げられているようで、集中力が上がるとか、疲れが取れるとかいろいろな効用がうたわれていて、しかもそれが割合簡単に誰でもできると言われているようなのですが、実際は誰でもすぐ30分以内にできるとかいうものではありません。
 もともと「マインドフルネス」というのは、特別な英単語ではなく、例えば新幹線なんかに乗っているとき「足元にご注意ください」という言葉が「Please be mindful of your step」と書かれているように、注意深くあるとか、注意を向ける、という意味で使われる程度の単語なのです。では、今お話している「マインドフルネス」がどのような意味で用いられるかというと、例えば歩いたり、立ったり座ったりすることに関して、私たちのほとんどの行為が自覚せずに行われています。ふと眼鏡を動かす時も、今、手がここにあるとか、今、触れるというような意識は伴わず、勝手に手が動き始めて、触って、いつの間にか終わっているという具合に起きているはずです。つまり、「be mindful」であるということはものすごくシンプルなことで、今、体がどうなっているのかに気付くこと。それが、体の面におけるマインドフルネスであると説明することができます。

[人は常に、快適か不快かを感じている]

マインドフルネスの対象というのは、体から始まって、次にこの体が何を感じているのかを自覚することに向かいます。それは、気持ち良いか、不快かということです。例えば、暑い所にいると不快だと感じたり、涼しい所に行ったら快適だと感じたり。さらには、批判されると不快だと感じたり、仕事が成功すると快適だと感じたり。人は常に快適か不快かということを感じています。自覚を向けていくというのは、今体が快適か、不快かを自己認識していくことを意味しています。
 人間も生き物ですから、他の生き物と比べてさほど特別なわけではなくて、好ましい感覚を与えられるとそれを繰り返したいと感じます。不快な感覚を与えられると、その場所から逃げ出そうとしたり、その相手をやっつけようとしたりします。職場で人間関係が耐え難いと感じたら、相手を攻撃したりするでしょうし、あるいは転職を考えるかもしれません。一見、人間的であるように見えて、実際は虫や動物のやっている情報処理と本質的には変わっていないのです。そういうとき、なぜ今、自分がこのような感情になっているのかを自覚することは非常に有意義です。あ、なるほど、不快な感覚を与えられていて、それがいやなんだなというふうに非常にダイレクトに分かるからです。“不快なんだ”というただそれだけのことです。あるいは、ただ気持ち良さがほしくて動いているだけなんだ、ということも分かります。自尊心を傷つけられたと感じたときや、逆に優越感に駆られて舞い上がりそうなとき、冷静に自己認識していられれば、あ、ただそれだけのことかと分かって落ち着くことができるのです。

[瞑想することは、マインドコントロールすることとは違う]

 体のことに自覚が伴って、そうして快、不快についての自覚の練習ができてきたら、第3段階の対象は心です。例えば、きょうは晴れているなという考えが湧いてきたら、あ、きょうは晴れているなと考えていることを自覚することができるでしょう。あの人はむかつくなという思いが湧いてきたら、むかついているなということを自覚することはできるでしょう。このように、心そのものというより、心の中に生まれてきた具体的な事象としての考え事を自覚することができます。これが第3段階目。
 瞑想というと、心のことを取り扱うイメージが強いかもしれませんが、順番通りに取り組んでいくとしたら、まず体からよく認識できるように修練を進めていって、次に体が快を感じているのか、不快を感じているのかを認識できる練習を積んで、それからようやく心が何を考えているのかに認識を向けるようになります。
 瞑想するということは、マインドコントロールすることとは違うんです。何かを無理やり心に説得するのではなく、事実がどうなってるのかを確かめてみましょうということに過ぎません。体から始めて、体が何を感じているのかを自覚して、自らの心が何を考えているのかを自覚して、その上で、心の中で本当に起きていることを観察するという段階を踏んでいくのです。

[今、起きていないことは現実ではない]

 念のため繰り返しておきますと、皆さんが期待しているほど、はい、30分取り組んだのでものすごく楽になりましたというふうにはいきません。それどころか、大変つらいというだけで終わるということも往々にしてあるのです。これから瞑想に取り組んでみようという意思がある方は、何らかの利益が得られるであろうことを多少は期待しているはずなんです。その期待がものすごく邪魔になるというのがポイントです。それはなぜか…。
 例えば、あ〜さっきあんなこと言っちゃったな、それは、さっき自分は不快だっただけなんだ、と後で分析することは簡単だと思います。それもやらないよりはやったほうが落ち着くので、非常に役に立つのですけど、後から振り返って理解するというのは、どちらかというと心理学とか哲学とかの領域なんです。仏教では、もう今しかないんです。さっきのことはもう終わっているので、それはもうどうでもよろしいのです。
 さっき誰々から何々を言われた。さっき何々がうまくいかなかった。あれ?それは今起きているんだっけ、いや、それは今のことではない。今のことではないということは、頭の中の記憶にすぎない。今、起きていないということは現実ではない。現実ではないということは実在していない。実在していないもののことを気にするのは意味があるのだろうか。それは意味がない、というふうに分かっていれば、今なすべきことにただ専念するだけです。これが身に付いてくれば、生きていく上で非常に実利的なメリットがあるはずです。
 こうなったらどうしよう、あの人から批判されたらどうしよう。でもそれも今起きていないので…というように、「今」に心が戻ってくるように習慣づけることが、自覚することとある意味セットになっていると言えそうです。遠回りをして説明してきましたが、疲れが取れるといいな、と思って取り組む時点で、根本的な矛盾があるんです。何もかもどうなっても構わない、ぐらいの何も期待しない心持ちで取り組むというのが重要なことで、それは、これからすてきな私になりたい、これからやがて良い感じになりたいという、自分を圧迫する重荷を下ろしてしまうこととも繋がっています。

[雑念が湧いてきても、ただそれに気付いておく]

 ではこれから、ほんのちょっとばかりの時間ですけれども、皆さんと実践してみたいと思います。
 姿勢は真っすぐに、でも石像のようにびしっとしているイメージは適切ではありません。お腹から力を抜くことが重要です。頭の中にいろいろと湧き上がってくる考えに対して、それを裁くような気持ちで観察しないでください。これは良い、これは悪いという、いつもどおりの癖を続けていると、すごく良いものとすごく悪いものは見えるようになりますが、そうでないものはよく見えなくなります。まあ、いろんな考えはあるでしょうよ、大丈夫、大丈夫と、のんびりと眺めていれば、見えない所に隠れていた感情も自然に浮かび上がってきて、自覚がもたらされやすくなります。
 視線は1メートル先ぐらいの床に落としておいて、何かに焦点を合わせないでください。これが見える、あれが見えるというのに着目せずに、あるがままに映しておきます。耳に聞こえているものも同様に、特定のものにフォーカスしようとせず、あるがままに任せておきます。雑念が湧いてきても、ただそれに気付いておくのです。お腹から、腰から、背中から、首から、肩から力を抜き去って、ただ真っすぐに保っておきながら、意識がふっと感じた事柄を、それ以上でもなく、それ以下でもなく、何も足さず、何も引かず、そのまま気付いています。
 リラックスした身体を持って、今ここ、この瞬間の現実に気付いています。これからこうならなきゃいけない、でも、さっきどうだった、でもなく、今こうなって、今聞こえている、今ここ。

 そうやってどこにもフォーカスせず、あるがままに。

PROFILE 人物紹介

小池龍之介
1978年、大阪府生まれ。月読寺住職。『考えない練習』(小学館)、『しない生活』(幻冬社)他、著書多数。2003年より、WEBサイト『家出空間』(http://iede.cc/)の運営を継続中。

C ROOMとは?

生まれる。育つ。クリエイティブを刺激するオープンスペース

スタヂオ・ユニ東京本社9階「C_ROOM」。発見と共感を常に創造し(Creative)、様々な才能と出会い(Customer)、新しい価値について挑戦し(Challenge)、多様なアジェンダについて議論を尽くし(Conference)、満足のいく時間(Contents)とここちよい空気(Cozy)が流れる場所。五感を刺激するさまざまなアクティビティを、ここから発信していきます。

東京都新宿区新宿2-19-1
ビッグス新宿ビル9F(C ROOM)
TEL : 03-3341-0141
FAX : 03-3341-0145

C ROOM

B ROOM

B ROOM